競馬界の七不思議
1987年のデビューから数々の記録を塗り替えて来た武豊騎手。51歳となった現在でもトップジョッキーとして存在感を見せている競馬界のレジェンドだ。そんな武豊騎手でさえ、いまだ勝利に手が届いていないのが20日に阪神競馬場で行われる朝日杯FS(G1)である。14年に中山競馬場から阪神競馬場へと条件が変更。悪い流れを断ち切るきっかけとなるかと期待されたが、残念ながら未勝利が続いている。
第一人者の武豊騎手だけに、”競馬界の七不思議”などということもまことしやかに言われているが、これには敗れた相手がいずれも大物揃いだったことも見逃せない。 94年に初参戦してこれまで【0.5.2.13/20】と20戦未勝利と不名誉な記録ではあるが、以下は2着に敗れたレースの騎乗馬と勝ち馬である。
■武豊騎手が2着の朝日杯FS(朝日杯3歳S時代含む)
19年 タイセイビジョン(サリオス)
15年 エアスピネル(リオンディーズ)
98年 エイシンキャメロン(アドマイヤコジーン)
95年 エイシンガイモン(バブルガムフェロー)
94年 スキーキャプテン(フジキセキ)
エアスピネルで2着・・・
こうしてみると持っている男・武豊にしては運が悪いと思える勝ち馬ばかりである。騎乗馬で後にG1を勝った馬はいない。これに対し、優勝馬は翌年以降もG1を勝利した馬や幻の三冠馬といわれたフジキセキや引退後は種牡馬となったリオンディーズなどいずれも強敵揃いだった。有力馬の騎乗が多い武豊騎手だが、不思議なことに朝日杯FSで1番人気馬に騎乗したのはエアスピネルとブレイクランアウトのわずか2回しかないというのもなかなか勝てない理由の一つといえる。
中でも特に大きな注目を集めたのは15年のエアスピネルでの2着だろう。同馬の母エアメサイアは現役時代にコンビを組んで秋華賞を勝利した縁のある馬でもある。その子供エアスピネルはデビューから2連勝でデイリー杯2歳S(G2)を楽勝して挑んだのが朝日杯FS。勝利の瞬間を待ち望んだのは武豊騎手だけではなく競馬ファンも同じだったに違いない。
レースでは直線半ばから力強く抜け出し、悲願にあと一歩というところまで迫ったものの、後方から1頭だけ異次元の脚で追い上げて来たリオンディーズの前に後れを取っての2着敗退。またしても勝てないジンクスは継続したのである。
武豊騎手はレース後「勝った馬が強過ぎました」と完敗を認めた。後日、ボートレースのイベントに出た際に「空気の読めないイタリア人がいたもんで……」と、勝ち馬に騎乗していたM.デムーロ騎手をいじって笑いに変えたが、内心は期するところもあったはずだ。
ジンクスに終止符を打つ
「あくまで個人的な意見ですが、エアスピネルよりも惜しかったのはもう1頭の1番人気ブレイクランアウトで敗れた08年ですね。このときの武豊騎手は11月下旬に落馬骨折をしていましたが、復帰戦でいきなりG1レースの騎乗を選択しました。それもこの一鞍のみと限定的だったことは、まだまだ万全な状態ではなかったのでしょう。後方待機からまくって直線早めに先頭に立ちましたが、早仕掛けがたたったせいかゴール前で伸びを欠いて差されてしまいました。骨折の影響だったかどうかはわかりませんが、武豊騎手らしくないミスだったように思います」(競馬記者)
着差という意味ではクビ差で敗れたエイシンキャメロンやスキーキャプテンの例もあるが、これは相手が悪かっただけに仕方のない部分もある。
今年はドゥラメンテ産駒のドゥラモンドとのコンビで参戦する武豊騎手。
今度こそ、勝てないジンクスに終止符を打つことが出来るだろうか。