ジャパンカップにヨシオが参戦する
またしてもあの馬が話題を独占してしまうのか。8冠馬アーモンドアイと無敗の三冠馬コントレイル、デアリングタクトの対決に沸く今年のジャパンC(G1)だが、『netkeiba.com』の予想オッズで一時は単勝1位倍台の圧倒的1番人気に支持されるという珍事の主役となった。
その当事者となったのはヨシオ(牡7、栗東・森秀行厩舎)だ。
26日現在では一転して単勝オッズ412.9倍と”定位置”に収まっているが、15年にデビュー戦の芝1200mを8着に敗れて以降、5年4ヶ月ぶりとなる芝のレース。しかも史上最高レベルの呼び声高い今年のジャパンCに登録をしてきたことはちょっとした”騒動”となった。
しかし、予想オッズでぶっちぎりの最低人気馬へ転落したとはいえ、ここまでの調整過程には熱がこもっている。栗東の坂路4ハロンで追い切られ、月曜に51秒5-ラスト1ハロン12秒7、最終追い切りとなった木曜は51秒5-ラスト1ハロン12秒9と上々の時計をマークしている。
時計面では上位人気が予想される有力馬とも遜色のない数字を叩き出しており、冷やかしではないかと疑っている世間の声とは異なって、本気度の高さが伝わって来る追い切りだったといえるだろう。
連闘でチャンピオンズカップへ
だが、ヨシオ陣営の野望はこれだけに止まらない。 なんと、『スポニチ』の取材に対し、ジャパンCの翌週に阪神競馬場で開催されるダートのチャンピオンズC(G1)に、連闘で挑むという仰天プランまで披露したのである。さらには「行くしかない」と逃げ宣言まで飛び出したため、これはレース展開に大きな影響を与えそうだ。近走はダートの中距離を3戦続いたが、それまで短距離を中心に使われていた馬だけに、行けるところまで行くという玉砕的な逃げを打つ可能性すら出て来るだろう。
ペース次第では上がりの掛かる展開も想定されるため、好位から競馬を進める先行勢にとっては意外と厄介な相手かもしれない。ヨシオに振り回されて、仕掛けが早くなると後続の餌食となってしまうリスクを負うことにもなりかねない。
「正直、かなり驚きました。出走すること自体衝撃的でしたが、チャンピオンズCまで参戦するようですから……。調教技術の進化した近年では、一昔前に比べて直行や数を使わない風潮も異端ではなくなりつつあります。
それだけに、G1レースを連闘で使うヨシオには色んな意味で敬意を表したいですね。場違いといった声も出てはいますが、別に悪いことをしている訳ではありません。競馬を盛り上げてくれたことでも十分に話題を振りまいてくれたといえるでしょう」(競馬記者)
G1連闘で思う出されるアノ馬
連闘でG1レースに挑んだことで有名なレースといえば、オールドファンにとっては懐かしいオグリキャップが出走した1989年のマイルCS(G1)とジャパンCだろう。この年の前半を脚部不安により全休したオグリキャップは、9月のオールカマー(G2)で復帰戦を飾ると、毎日王冠(G2)で1着、秋の天皇賞(G1)でスーパークリークの2着に敗れたが、4戦目のマイルCSを優勝。このレースでバンブーメモリーとハナ差の激闘を演じたばかりだった。
だが、陣営は翌週のジャパンCにも参戦を表明。ホーリックスとの壮絶な叩き合いに敗れて2着となったものの、このときの勝ち時計2分22秒2は2005年のアルカセットに更新されるまで、東京・芝2400mのレコードとして燦然と輝いた。
暮れの有馬記念では5着と敗れはしたが、後期だけでG1レースを4戦するというタフさは、現在の競走馬とは一線を画する名馬だったといえよう。
さすがに、歴史的な名馬とヨシオを比べるのは可哀想だが、出走する全馬にチャンスがあるのも競馬だ。
話題のお騒がせ馬は下馬評を覆して、アッと驚く快走を見せてくれるだろうか。