ムーアも認めた逸材
「正直、トップクラスの馬だと思う」無敗三冠へ王手をかけ、いよいよ歴史的快挙の瞬間が迫っているコントレル(牡3歳、栗東・矢作芳人厩舎)。単勝1.1倍の支持を集めて快勝した先週の神戸新聞杯(G2)は、前年比190.5%となる売上レコード。もはや、父ディープインパクトに迫る「国民的ホース」の誕生間近と述べても過言ではないかもしれない。
そんなコントレルが「絶対的存在」として競馬ファンに広く認知されたのは、昨年11月の東京スポーツ杯2歳S(G3)だった。
過去10年を振り返っても、勝ち馬10頭から3頭のクラシックホース、5頭のG1馬を輩出している超出世レースに翌年のクラシックを狙う素質馬が集結したが、終わってみればコントレルが5馬身差で圧勝。従来を1.4秒も更新する驚異のレコードを叩き出し、「1強」を強く印象付けた。
このすでに「伝説級」といえるパフォーマンスには、2着アルジャンナに騎乗していた川田将雅騎手が「勝った馬が強すぎた」と完敗を認めれば、手綱を執ったR.ムーア騎手も「正直、トップクラスの馬だと思う」と最大限の評価。
さらに競馬ライターの平松さとし氏がムーア騎手へ「世界でも通用すると思うか?」と質問したところ「レベルの高い日本の重賞であれだけちぎって勝てるのだから、行く行くは世界へ出ても戦える資格のある馬でしょう」と、世界的名手が太鼓判を押している。
池江師が感じたコントレイルの強さ
ただ、それら以上にコントレルの未来を「具体的に」予見していた人物がいる。アルジャンナを出走させていた池江泰寿調教師だ。「ダービーは決まったね。先生に全部獲られた」
JRAの機関紙『優駿』によると、コントレルの圧勝に終わった東京スポーツ杯2歳Sのレース後、池江調教師が矢作芳人調教師にそう声を掛けたという。池江調教師の「全部」とは、やはりクラシック三冠のことだろう。
本馬を管理する矢作調教師でさえ「えー、そうかね」と大きな手応えを感じながらも、まだこの大物2歳馬の潜在能力を測りかねている当時に出た、事実上の白旗。まだ2歳の11月にも拘らず、ライバルに掛けるにしてはあまりにも“絶望的”な言葉だ。
本物は本物を知る
「単勝1.1倍でデビュー戦を勝利するなど、相当な手応えを感じていたアルジャンナがまったく敵わなかったことで多少、悲観的になっていた部分はあると思いますが、池江調教師は何と言っても現役調教師で唯一、牡馬三冠(オルフェーヴル)を成し遂げている名伯楽。本物は本物を知るではありませんが、コントレルの衝撃的な走りから『三冠馬ならではの手応え』のようなものを、すでに感じ取っていたのかもしれません」(競馬記者)
あれから約1年。コントレルは無敗街道をひた走り、池江調教師の“予言”はいよいよ現実のものになろうとしている。
しかし、その一方で、そんな絶対王者の背中を追いかける一番手もまた、神戸新聞杯の2着馬ヴェルトライゼンデを管理する池江調教師だ。奇しくも、鞍上にはオルフェーヴルで三冠を成し遂げた池添謙一騎手。
「三冠」を知る男たちが、最後の最後で“予定調和”の未来を覆しにかかるに違いない。