今年は二冠馬デアリングダクトが不在・・・
3日間開催が行われる今週は、秋華賞と菊花賞の重要な前哨戦といえるトライアルレースが行われる。ここでは特別な性質を持つ「トライアルだからこそ狙える馬」を検証したい。まずは牝馬三冠最終戦である秋華賞の最終トライアルレース・ローズS(G2)からいってみよう。
今年の3歳牝馬戦線はデアリングタクト一色といっていい。無敗で桜花賞と優駿牝馬(オークス)の二冠を制し、史上初となる無敗の牝馬三冠を目指しているからだ。ただそのデアリングタクトはこのローズSに出走せず、秋華賞への直行が決定している。同馬が出走すれば絶対的な軸馬だっただけに、今回はかなりの混戦模様といっていいだろう。
ローズSは上位3着までに秋華賞の優先出走権が与えられる。通常であれば賞金的に秋華賞に出走できないような馬であっても、ここで3着以内に入れば出走が確定するということもあって、格下馬の下克上を狙った激走がたびたび見られる。
逆に言えば、すでに賞金的に秋華賞の出走が決まっている陣営は、ここで100%に仕上げる必要はなく、そういった実績馬が足をすくわれるケースも少なくない。後の牝馬三冠馬アパパネやスティルインラブも1番人気で4着以下だったが、本番ではキッチリ巻き返している。
つまり次の本番である秋華賞を見据えた陣営や、権利をとるために全力投球となる陣営など、関係者の狙いは様々で、それが複雑に絡みあうレースでもあるのだ。
そこで過去10年で3着以内となった30頭の中から、ローズSで権利を取らなければ確実に秋華賞へ出走できなかった可能性がある馬を調査。その馬の傾向を探ってみた。調査対象馬は収得賞金1500万円以下(現2勝クラス勝ち・旧1000万クラス勝ち)あたりまでの14頭だ。
まず14頭中13頭が関西馬で2013年以降はすべて関西馬。つまり関東馬の格下馬はほぼノーチャンスだ。さらに14頭中11頭が社台グループの関連馬(生産・馬主)で、クラシックに力を入れている社台グループの意向が結果に結びついているといえる。
活躍する騎手は?
騎手を見てみると重賞を何勝もしている関西のトップジョッキーばかりで、関東は横山典弘騎手のみ。関東所属騎手や若手騎手の出番はほぼない。秋華賞の権利がかかっているだけに、経験を含めハイレベルな騎乗が求められるのだろう。■過去10年で3着以内に入った該当馬
2011年3着キョウワジャンヌ 飯田祐史
2012年3着ラスヴェンチュラス 川田将雅
2013年3着ウリウリ 浜中俊
2013年2着シャトーブランシュ 北村友一
2014年3着リラヴァティ 松山弘平
2014年2着タガノエトワール 小牧太
2015年3着トーセンビクトリー 武豊
2015年1着タッチングスピーチ ルメール
2016年3着カイザーバル 四位洋文
2016年2着クロコスミア 岩田康誠
2017年2着カワキタエンカ 横山典弘
2017年1着ラビットラン 和田竜二
2018年3着ラテュロス 秋山真一郎
2018年2着サラキア 池添謙一
まず注目は前走だ。1頭だけ4月のフローラS(G2)以来という馬はいたが、それ以外の13頭はすべて前走が条件クラス。特に2勝クラスに出走していた馬は7頭と半数で、着順は6着以内ならOK。
しかし前走2勝クラスで敗退していた馬は、前々走で1勝クラスを勝利していることが条件。前走1勝クラスを勝利した馬も5頭と侮れず、この2つの条件クラスを使っていた馬が狙い。なお重賞以外で2桁着順がないことも重要だ。格下のクラスで大敗しているようでは上位争いは難しい。
また14頭中10頭が春以前に重賞もしくはオープン特別に出走経験がある。そして2勝馬11頭のうち9頭も、春以前に重賞かオープン特別に出走経験があるので、勝利数が少ないとはいえ、いきなり重賞初挑戦よりは経験がある馬が有利と判断できる。
そしてローテーションは14頭中9頭が前走8月に出走、7月2頭、6月1頭、9月1頭、4月1頭なので基本的に夏を使った馬が好走しやすい。また14頭中5頭がデビュー戦で勝利し、5頭が2戦以内、3頭が3戦以内と対象馬の多くが早くから勝ち上がっている。初勝利に4戦以上かかっているような馬は厳しい。距離適性も重要ですべての馬が芝の1600~2000mで勝利している。
これらの要素をまとめると以下の通りとなる。
・社台グループ関連馬
・関西の厩舎
・関西所属騎手
・前走条件クラス
・重賞以外で10着以下無し
・夏に出走
・デビュー3戦以内に勝利
・芝1600~2000mで勝利
以上の傾向やデータを踏まえて今年の出走予定馬を見てみると、激走候補に該当する馬が2頭いる。
データから浮上する2頭は?
フアナ厩舎:角居勝彦
騎手:ルメール
生産:ノーザンファーム
前走:3歳以上1勝クラス勝利(8/15)
フローラS(G2)3着
デビュー2戦目で勝利
芝1800mで2勝
ラインオブダンス
厩舎:矢作芳人
騎手:坂井瑠星
生産:白老ファーム
前走:3歳以上1勝クラス勝利(8/29)
アルテミスS(G3)4着
デビュー3戦目で勝利
芝1800mで2勝
フアナはルメールが騎乗するように陣営の期待はかなりのものと想像できる。デビューから4戦すべて上がり最速を記録し、休み明けの前走もプラス28㎏で快勝。フローラSでオークス2着のウインマリリンと接戦を演じているだけに、今回の勝ち方次第でデアリングタクトのライバルにも浮上するだろう。
ラインオブダンスは休み明け2戦目の前走が味のある勝ち方。左回りの経験もあり、デビュー以来すべて5着以内の堅実派。現在JRAリーディングの矢作厩舎の馬であり、全2勝の適距離で一発があっても驚けない。
以上が、このローズSで好走が期待できる賞金不足の馬だ。この2頭が秋華賞へ確実に出走するには、ここで3着以内が条件。それだけにジョッキーも渾身の騎乗を見せてくれるだろう。どんな走りを見せるか大いに注目したい。